お酒の売上は毎年下がっているらしい。
こんな話を聞いたことがある人も多いと思います。
「若者のアルコール離れ」なんて事も言われて久しいですね。
他にも少子高齢化による「一人当たりの飲酒量減」も原因のようです。
そんなダウントレンド中の酒類業界で近年業績を伸ばしているのが「クラフトビール」。
ここ数年間で検索ボリュームも増えてきました。
2021年の販売量は前年比200%を達成。
大手ビール会社からもクラフトビールが立て続けに発売されていますね。
今回の記事では近年ブームが再燃しているクラフトビールについて、味や特徴をビアスタイル別に解説していきます。
自分の好きなビアスタイルを知ることで、新しいビールとも出会いやすくなり、より楽しいビアライフを送れるはず。
クラフトビールについて興味が出始めてきている方、もっと詳しくなりたいというビール好き方への、きっかけになる記事になればと思います。
ビールの売上高は減少傾向。ピーク時の1/4に
冒頭でも触れましたが、日本国内においては酒類全体の売上が下がっています。
特にビールは平成6年をピークに現在は1/4まで減少している状況です。
ちなみにビールよりも安価で購入できるの新ジャンル(第3のビール)はリキュールに分類されます。
本麒麟や金麦などCMでもお馴染みですね。こちらは安さを理由に市場を拡大し続けています。
クラフトビールの定義とは
そもそもクラフトビールとは何か?
クラフトビールブームの発信源であるアメリカでは、「ブルワーズ・アソシエーション」というクラフトビール推進活動団体によって以下の様に定義しています。
- 小規模であること(年間生産量600万バレルまで)
- 独立していること(当ブルワリー以外の資本金は25%未満に抑えること)
- ブルワーであること(アルコール・タバコ税貿易局からの許可を得て、ビールを醸造していること)
しかし、日本ではクラフトビールの定義が特にあるわけではないので、
「小規模な醸造所で造られるオリジナリティーのあるビール」
程度に覚えておけば良さそうです。
ではビール醸造所はどのぐらい増えているのかと言うと、次のグラフ。
こちらが2010年と2020年のビール醸造所の数を表したグラフです。
ビールの売上が減り続けているのに対して、製造免許場数は過去10年で約2倍になっています。
地ビールブームなど要因はあるようですが、醸造所が増えるほど多様なビールが飲めると言う事なので、ビール好きの方には朗報ですね。
しかし、ビアスタイルで分類すると日本国内に流通しているビールのほとんどは同じ種類だったんです。
ここからはビールの作り方とビアスタイルについて見ていきたいと思います。
ビールの種類は大きく分けて3つある
ビールの種類は発酵方法によって次の3つに分かれます。
- 上面発酵「エール」
- 下面発酵「ラガー」
- 自然発酵「その他」
さらに原料や製法、香りや度数によって100種類以上に細分化され、どんなビールでもいずれかに分類されます。
KING OF HOPなビール界の権威「マイケル・ジャクソン」
ビアスタイルを語る上で外せない人物が「マイケル・ジャクソン」です。
マイケル・ジャクソンと言っても世界的アーティストとは別のマイケル・ジャクソンさんなんです。
1942年イギリスのウェザビーで生まれたビール界のMJは、元々新聞記者として働いていました。そして取材を通じてビールの理解を深めていき、次第に評論や執筆といった活動をするようになっていきます。
その後20代という若さで、当時は全くと言って良いほど確立していなかったビール評論家に転身。
「The Beer Hunter」と呼ばるまでになったのです。
彼の著書である「The World Guide to BEER」は業界に衝撃を与えました。
世界中にある地ビールを細かく分析し、カテゴライズしたものをまとめたこの本は12カ国で翻訳される大ヒットとなり、現在もマニアのバイブルになっています。
100種類以上あるビアスタイルの基礎を作ったのが、このマイケル・ジャクソン氏と言うわけです。
ちなみにベルギービールを世界に広めた第一人者としても有名で、醸造関係者以外で初めての「ベルギービールの騎士」に認定。
ベルギービールは彼の死後、ユネスコの無形文化遺産に登録されています(2016年)
さて話が少し脱線してしまいましたが、ここから発酵方法別にビアスタイルの味や特徴をみていきたいと思います。
上面発酵(エール)で作られたビール
ペールエール
イギリス発祥のビアスタイルで、ホップ由来の苦味やモルトの甘みが感じられ、香り豊かな味わいが特徴。「ペール=淡い」を意味しており、それまで飲まれていたエールに比べて色が薄い事からそう呼ばれるようになった。
アンバーエール
アメリカの西海岸発祥のビール。ペールエールよりも焙煎度の高い麦芽を使用することにより色は「琥珀色=アンバー」。ホップ由来の強めの苦味と、カラメルやトーストの様な香りが特徴。
ゴールデンエール
名前の通り黄金色のビール。柑橘系の香りとモルトの穏やかな甘味、すっきりした味わいが特徴。ビール界の権威、マイケル・ジャクソンが命名した事でも有名。
IPA
インディア・ペール・エールの略称で、イギリスからインドにビールを送る際に腐敗防止策としてホップを大量投入したのが始まり。ホップを大量に使用している為、香りと苦味が強いのが特徴。
スタウト
ギネスビールの創業者であるアーサー・ギネスが考案したビール。原材料にローストした大麦を使用している為、独特の苦味や香ばしい香りを持っているのが特徴。
バーレイワイン
アルコール度数が8%から12%と高いのが特徴。半年から数年の熟成期間を使って作られる為、樽香などの熟成香が感じられる。300年の歴史を持つバーレイ(大麦)ワイン。
ヴァイツェン
一般的には「ヘーフェヴァイツェン」の事を指す。南ドイツ発祥の小麦麦芽50% 以上を使用したエールビール。ホップの使用量が少ない事から、ほとんど苦味を感じられない味わいで、特にバナナやクローブを思わせるような香りが特徴。
下面発酵(ラガー)で作られたビール
ピルスナー
世界で飲まれているビアスタイルの約7割を占めているのがピルスナー。その中で1842年にチェコで誕生したものを「ボヘミアン・ピルスナー」と呼び、軟水を使用する事で世界初の黄金色のラガービールとなった。ホップの苦味と爽快な喉越しが特徴。日本国内で流通しているビールの大半がこのピルスナーに分類される。
シュバルツ
ドイツ・バイエルン地方発祥の黒ビール。詩人のゲーテも愛飲していたとされている。「シュバルツ=黒」という意味で、チョコレートやコーヒーの様な香ばしさを感じられるが、ラガーならではのすっきりとした味わい。
ドルトムンダー
ドイツ最大のビール生産都市ドルトムントで誕生したビール。ピルスナーを参考にして作られたと言われており、ホップの香りや苦味が少なくマイルドな味わいが特徴。サッポロのエビスはこのドルトムンダーとピルスナーの間ぐらいのビール。
ヘレス
ピルスナーが北ドイツで人気なのに対し、南ドイツで広く飲まれているビアスタイルの一つがヘレス。世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」が開催されるミュンヘンで1894年に誕生した。麦芽の旨味や香りが感じられるのが特徴。
ラオホ
ドイツ・バンベルク発祥の名物ビール。ラオホとはドイツ語で煙という意味で、燻製した麦芽を使用して作られる。スモーキーで独特な味わいが特徴。
自然発酵(その他)で作られたビール
ランビック
野生の酵母を使用して自然発酵で作られるビール。ブリュッセル・パヨッテンラント地方でのみ醸造されている。長期間の熟成に耐えられるよう敢えて古いホップを大量に使う為、独特の酸味やチーズの様な香りになるのが特徴。発泡性はない。
出回っているランビックのほとんどはグーズというブレンドタイプになります。
グーズ
塾生期間が1年程の若いランビックと2〜3年熟成させたランビックをブレンドしたビール。若いランビックをブレンドする事で瓶内二次発酵が起こり炭酸ガスが発生。「麦のシャンパン」とも呼ばれる。心地よい酸味が特徴。
クリーク
ランビックにさくらんぼ(クリーク)を漬け込み瓶内二次発酵させたビール。さくらんぼ以外にも苺や桃を漬け込んだものがあり、まとめて「フルーツビール」と呼ばれる。甘苦い風味が特徴。
マイケル・ジャクソンさんお薦めの日本のビール
最後にマイケル・ジャクソン氏がお薦めしている日本のビールを紹介したいと思います。
「世界ビール大全」の中で日本のビールについていくつか評価をしているのですが、
唯一最高評価の星4を獲得しているのが、アサヒビールのスタウトです。
本の中で以下のように評価しています。
シェリーとウイスキーの香味を持ち、傑出した出来の、アルコール度が高い、伝統をしっかり踏まえたスタウト
世界ビール大全:マイケル・ジャクソン(著)、金坂留美子/詩ブライス(訳)
この本では1,700種類以上のビールが評価されていますが、最高評価の星4つを獲得しているものは多くありません。
同じくスタウトで有名な「ドラフト・ギネス」でさえ星3の評価です。
日本の、しかも一般的にはあまり知られていないビールが星4だなんて意外ですよね。
そんなビールが日本にもあったのか!
飲んでみたい!!
と思う「アサヒ スタウト」ですが、ほとんどのスーパーでは取り扱っていません。
酒屋さんでも取り扱っている店はそう多くないので、ネットで買うのがおすすめです。
執筆時点ではAmazonが最安値でした。
ビアスタイルを調べてお気に入りのビールを見つけよう!
クラフトビールの種類について見てきましたが、普段飲んでいるビールはありましたか?
ビアスタイルはこの記事では紹介しきれない程沢山ありますので、「このビール好きだな」と思ったらビアスタイルを確認してみましょう。
そうする事で、別のお気に入りビールがきっと見つかるはずです。
ビアスタイルを勉強するならこの本がおすすめです。
中古を含めて出回っていないので、図書館で借りるもの良いかもしれません。
身近な飲み物だけど、奥が深いビール。
今回の記事があなたの楽しいビアライフの一助になれば幸いです。