今回はモバイルキャリアの大手3社と沖縄セルラーについて、「配当狙いで買える銘柄はどれか」という視点で解説していきます。
個人的にはKDDI株をおすすめしたいところですが、執筆時点の株価だと配当利回りが低く、タイミング的におすすめできません。
しかし予め注目するべきポイントを確認しておくことは重要です。なぜならチャンスの際に即行動したいから。
いつ株価が下がり配当利回りが良くなるかはわかりませんが、今できる事は進めておきましょう。
今回も比較していく項目は多いですが、できるだけ簡単にまとめたので参考にしてみて下さい。
通信会社それぞれの会社概要まとめ
まずはザックリと各社の会社概要を確認していきましょう。
NTT
1985年に国営企業である日本電信電話公社が民営化され日本電信電話株式会社になりました。
よく耳にする「NTT」は一般呼称になります。
通信セクターの中では最大規模の13.8兆円の時価総額を誇り、連結子会社は950社超。NTTグループの社員数も33万3千人を超える大企業です。
2020年の12月にドコモを完全子会社化しました。
ソフトバンク
2004年に日本テレコムを買収して通信事業に参入。
- ソフトバンク
- ワイモバイル
- LINEMO
の3ブランドを展開しています。
その他にもPayPayやYahoo!、LINEなど身近にあるサービスもソフトバンクが運営しています。
KDDI
2000年に「DDI」「 KDD」「IDO」の3社が合併して発足しました。
連結子会社に
- 沖縄セルラー
- JCOM
- UQコミュニケーションズ
などがあります。
着うたやパケットの定額制、ワンセグ対応携帯の販売など、当時では業界初や世界初だったサービスを提供してきた企業です。
沖縄セルラー
1991年設立。
KDDIの子会社で沖縄県内のモバイル事業では50%超のシェアを獲得しています。
2018年、世界で初めて5Gでの自由視点映像のリアルタイム配信に成功しました。
通信株は安定した配当実績がある
高配当株投資をする上で一番重要な「配当」にまつわる数字を確認していきたいと思います。
「配当利回り」「一株あたり配当金」「配当性向」と見ていきますが、KDDIはバランスが取れているように感じました。反対にソフトバンクについてはあまり手を出したいとは思えないですね。
基地局を設置してしまえば、基本的に大きな投資が必要ない為、高配当株化しやすい通信株。
ですが国内でのモバイル普及率も頭打ちになり、今後は人口減との戦いになるため、別の戦略が必要です。
そうすると利益を株主還元だけに回してて良いものか?など確認しなくてはいけないポイントが見えてくる気がします。
現在の配当利回りはあまり魅力的ではない
各社の配当利回りはこちら。
一般的に配当利回り4%以上を高配当株と呼ぶので、執筆時点ではソフトバンクのみが該当している状況です。
沖縄セルラーも高配当株として人気でしたが、現在の利回りでは高配当株とは呼べないので、タイミングを考えたいところです。
沖縄セルラーの配当利回りが4%を超えていたのが2020年の3月頃でした。ここ10年で見ても株価が値上がりし続けているのでよっぽどのタイミングでないと4%超えで買うのは難しそうですね。
ソフトバンクについては、利回りが高すぎて不安だなと個人的には思いますが、これから見ていく数字で納得できるなら検討してみても良いかもしれません。
順調に連続増配中!コロナでも減配はなし
どの企業も過去5年で大きな減配はなし。
コロナショックで減配をする業種もあった中、流石は通信株。景気に左右されにくいのは評価できますね。
またソフトバンクを除く3社は綺麗に右肩上がりで推移しています。つまり連続増配をしているという事なので、こちらも大きな評価ポイントです。
通信株の配当性向は40%前後と高い
配当性向は30%から40%前後で、過去5年間で見てもこれぐらいの数字で落ち着いています。
そんな中ソフトバンクだけが突出して高く、2020年から配当性向が80%を超えている状況が続いています。
つまり利益のほとんどを株主還元しているしているわけですが、ここの数字も各投資家で意見は分かれそうです。
個人的にはこんなに極端な数字を提示されると、どうしても不安の方が勝ってしまいます。
売上規模一位はNTT。KDDIは全体的に優秀な数字
ここからは各社の売上や利益に関する数字を見ていきたいと思います。
7項目と少し多いですが、どれも大事な数字なのでしっかりと確認していきましょう。
同じ通信セクターでも企業によってバラツキのある指標もあります。
「高配株当投資をするなら、どの企業に安心して資金を出せるか」を考えながら見ていくとブレなくて良いと思います。
売上高の第一位はNTTで12兆円。ソフトバンク、KDDIが続く
売上高は各社順調に推移。
2023年3月期も「NTT」「ソフトバンク」「KDDI」では最高益になる見通しとのことです。
これから先も通信とは切り離せない生活になるはずなので、商売が極端にうまくいかなくなる事もないでしょう。
また他の業種と違って新規参入にハードルもある為、後発の会社にシェアを一気に喰われる心配もありません。楽天の惨敗っぷりを見て新規参入への心理的ハードルはさらに上がっていそうです。
営業キャッシュフローは各社問題なし
続いて営業キャッシュフローです。
過去5年の流れを見ても各社問題なさそうですね。
各企業のセグメント内容によってバラツキの出る営業利益率
営業利益率はNTTと沖縄セルラーで6%ほどの差があります。
各企業の事業内容によって生まれている差で、例えばNTTは「グローバル・ソリューション」と「不動産/エネルギー」の利益率が5%台となっており、全体の数字を引き下げています。
NTTがKDDIを抜いて一株あたり純利益一位に
一株あたり純利益(EPS)は、2021年3月期までKDDIがトップでした。
売上高ではNTTに倍の差をつけられていますが、収益力ではKDDIの方が優秀と言えそうです。
ソフトバンクの有利子負債額が気になる
直近で極端な借り入れもなく、各社特に問題はなさそうですが、ソフトバンクの有利子負債額が高いのは気になります。
次項の自己資本比率もかなり低くなっています。
沖縄セルラーは自己資本比率81%!下位のソフトバンクは13%
自己資本比率に関しては各社大きくバラつきがあります。
一般的に50%以上あると優良企業、最低でも30%は欲しいと言われていますので、ソフトバンクを除く3社は合格ラインを超えている状態です。
沖縄セルラーは80%を超えているので倒産のリスクはほとんど無さそうですね。
一方、自己資本比率が極端に低いのがソフトバンクです。有利子負債額が大きく自己資本比率は10%台。
売上も利益も安定しているので倒産の心配をする事はありませんが、ソフトバンクが主としていたモバイルサービスの売上高も全体の65%まで比率を下げている状態なので、他の通信業社との比較は難しいのかなと思いました。
売上高が同程度でもフリー・キャッシュには倍の差が出る
フリー・キャッシュ・フローの推移も各社似たような感じですね。
売上高1位のNTTは1兆円を超えるフリー・キャッシュ・フロー。
売上高がほぼ同程度のソフトバンクとKDDIを比べると、KDDIの方が倍近くのフリー・キャッシュを持っていることがわかります。
各社の配当政策と狙っていきたい高配当株
各社の配当政策を簡単にまとめました。
配当政策
NTT
継続的な増配
ソフトバンク
2021年3月期から2023年3月期は純利益の85%程度を配当として還元していくと発表済み
KDDI
配当性向40%超を維持していく方針
沖縄セルラー
配当性向40%超を目標とする
KDDIはタイミング次第では買っていきたい。ソフトバンクは購入予定なし
高配当株として人気の高い通信セクターの4企業を比較してきました。
配当利回りがもう少し欲しいなというタイミングなので、今すぐに購入とはなりませんが、予習しておくことでチャンスが来た時に慌てなくて済むのではないでしょうか?
ちなみにNTTとKDDI、沖縄セルラーについてはすでに保有済みで、簿価利回りはそれぞれ
- NTTが4.3%
- KDDIが4.1%
- 沖縄セルラーが3.4%
となっており、タイミングよく購入できた為含み益も乗っている状態です。
唯一保有していないソフトバンクへの投資ですが、「成熟企業」からの「安定した配当金」を望む投資家にとっては考えることが多そうで購入する予定はありません。
個人的には、KDDIは安定した売上高と高い収益力を持つおすすめしたい高配当株であると考えていますが、皆様の目にはどう映ったでしょうか。
皆様の配当生活の一助になれたら幸いです。
高配当株については他のセクターの記事もあるので、ぜひ覗いてみて下さい。