2050年の食文化を予想|ヴィーガン&ソバーキュリアスが浸透した世界

これからの30年で食のあり方は大きく変わりそうです。

30年後の2050年には、世界の人口が100億人に達する見込みでその時の人口最多国はインドになると言われています。

ご周知の通り、インドの人口の80%は「牛肉を食べない」ヒンドゥー教徒です

また欧米を中心に広がりを見せている「ヴィーガン」や「ソバーキュリアス」ですが、彼らを親に持つ今の子供達が親世代になるのも30年後の2050年です。

つまり肉食や飲酒の習慣がない環境で育った子供達が次世代に価値観を伝えていくのも2050年頃という事です

2050年には、「酒も飲まず、肉の代わりに昆虫を食す」そんな食文化が普及している世界がやってくるかもしれません。

今回は「人は肉食をやめることができるのか?」を中心に、これからの食文化について考えていきたいと思います。

ヴィーガンになる理由

経済産業省 資源エネルギー庁:日本の温室効果ガス排出量(2019年度)

ヴィーガンを始める理由は人それぞれです。

その理由は「自身の健康の為」以外にもたくさんあるのですが、ここでは個人的に気になったヴィーガンになる理由3つを紹介します。

1.畜産から出る温室効果ガス排出量は自動車よりも多い

畜産業で排出される温室効果ガスは全体の約15%を占め、自動車から排出される温室効果ガスよりも多いのが現状です。

主に畜産から排出されるのは家畜のゲップやオナラに含まれるメタンガスで、その温室効果はCO2の80倍もあり、牛1頭から排出されるメタンガスは1日300-500リットルと言われています。

肉食をやめることが、地球温暖化の原因でもある温室効果ガス削減に繋がっているのです

2.約束のネバーランドよりも残酷な世界

グルメ番組を見ている時に「冷静に考えたら残酷だな」と思うことはありませんか?

笑顔で紹介される「肉汁」「ミンチ」「濃厚豚骨スープ」などなど。

人に置き換えるとその残酷さはリアルに感じられ、まさに約束のネバーランドの世界です。

映画「フード・インク」で紹介された畜産の現実は、お気楽に想像していた世界とはかけ離れたもので、現実世界はもっと残酷なんだと実感しました。

また、ヴィーガンの人は肉そのものだけではなく牛乳や蜂蜜も避けています。

それは本来なら牛の子供に与えられるはずだったミルクを人間が横取りするのはおかしいと考えているためです。

母乳・離乳を経て成長したはずなのに、なぜ牛のミルクは飲み続けるのか?

確かに不思議ですよね。

お寺に毛皮はNG

仏教では「無益な殺生は行わない」不殺生の教えがある為、お寺を参拝する際には毛皮やファーなど動物をイメージされるものは着用しないように気を付けましょう。

参考:約束のネバーランド コミック 全20巻セットフード・インク Blu-ray

3.痩せる人、肥える牛

大量廃棄される食品がある一方で、飢餓問題は一向に解決しません。

こうした食の不均衡は人間同士の間だけで起きているわけではなく、畜産にも関連しています。

世界では人間が十分に食べていけるだけの穀物が生産されていますが、その穀物は人間に行き渡らずに家畜の餌になっているのです

「先進国で消費される肉を生産するため」に多くの穀物が必要で、例えば1kgのステーキ肉を得るのに25kgもの穀物が使用されます。

肉をやめる為に肉が必要

Impossible Foods

生活習慣で新しく「何か」を始めたい時には、今習慣としている「別の何か」を犠牲にして時間を確保しなくてはいけません。

また「何か」をやめる時にも、代わりになる「何か」が新たに必要です。

では肉をやめるには?

そう。肉が必要なのです。

代替肉とは|植物生代替肉と培養肉

肉の代わりと言われて最初に思いつくのが、植物性原料を使ったプラントベース食品(植物性代替肉)ではないかと思います。

スーパーで見かける大豆ミートはこれに当たります。

一方、動物の細胞を使って作るのが培養肉で、こちらはまだ市場流通していません。

日本では「食べられる培養肉」が作られたばかりで、今後の研究開発が期待されています。

日清食品ホールディングス:日本初!「食べられる培養肉」の作製に成功

代替肉では満足できない理由

先程紹介した大豆ミートも、ハンバーグやキーマカレーといったメニューではかなり満足できるクオリティーで楽しむ事ができます。

つまり挽肉に見立てたメニューでは、ほとんど違和感なく受け入れられるレベルになってきているのです。

では、ステーキではどうか?

肉好きの方を満足させるには、やはりステーキのような食感・食べ応えを楽しめるものでないと納得感が無く、肉食をやめるという選択肢は浮かんでこないでしょう。

「本物」を追求するインポッシブル・フーズ

代替肉市場で有名なアメリカのインポッシブル・フーズが作り出す大豆ミートは、肉好きの方から一定の評価を受けています。

それは大豆から抽出した「鉄分を含むタンパク質」を使用する事で、肉好きの方が求める「血の滴るような」肉感を再現しているからです。

今後はインポッシブル・フーズのような「本物」により近い代替肉商品が増えていくと思われます。

代替肉の有効期限

サントリー ノンアルコール飲料レポート2022

完全な肉を再現できるようになった時、人類は一生それを食べ続けるのでしょうか。

代替肉は、あくまで肉の代替品でしかありません。

そして代替品が本物になる日はやってこないのです。

本物が忘れ去られた時、それを模倣して作られた代替品は必要なくなるのかもしれません。

本物かどうかを見抜くには、まず本物を知らなければならない

これまで見てきたように、代替肉は味や食感、見た目までも「完全な肉」に近づけるよう研究され続けています。

しかし、今後「完全な肉」を再現できるようになったとしても「完全な肉」の味を知らなければ意味がありません

肉の味を知っていて、それを求める人にしか需要がないのです。

これからヴィーガン文化が普及していけば本物の肉を知る世代が減り、やがて誰も本物の肉を知らない時代が来るでしょう

そんな時代になった時、本物そっくりに作られた肉は必要とされるのでしょうか。

本物よりもリラックス効果の高いノンアルコール飲料

ある研究で、本物のワインよりも酒の入っていないノンアルコールワインの方がリラックス効果が高かったとの結果が出ました。

その理由はワインに似た味を感じることで、本物のワインを飲んだ時の経験を脳が思い出したから。

さらに酔わないという安心感でよりリラックスできたそうです。

ノンアルコール飲料も代替肉も本物を知っている人だけに有効な商品と言え、やがて本物を知らない世代になった時、それらを口にする理由は無くなります。

参考|食の起源 第4集「酒」 ~飲みたくなるのは “進化の宿命”!?~

ソバーキュリアス

近年、欧米の若者の間でソバーキュリアスというライフスタイルが流行っています。

ソバー(しらふ)とキュリアス(好奇心)を組み合わせた造語で、あえて飲まないのが格好良いという考え方が浸透しつつあるのです。

Z世代の酒離れが叫ばれて久しいですが、実際にノンアルコール市場は拡大し続けています。

そもそも人間には肉は必要なのか

厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』

人間の生活には肉は必要なのか。

数千年前から続いている文化の惰性で現在も食べ続けているだけで、本当は人間にとって不要なものなんじゃないのか

ヴィーガン思想はどの時代にもあったと思われますが、大きく広まりませんでした。

しかし、サプリのある現代だからこそ肉食を辞められます。

数千年・数万年の縛りから解放される時代が来たと言えるかもしれません。

犬だってヴィーガンになれる

人以外の動物でもヴィーガンは存在します。

例えば食肉目のジャイアントパンダの主食は、ご存知の通り竹です

雑食動物なので、はるか昔は肉を食べていたらしいのですが、環境変化に対応するため現在は食事の99%以上が竹になりました。完全なヴィーガンです

また、身近な食肉目である犬も果実や果物から栄養を吸収する器官が備わっているので、ヴィーガンになる事ができます*。

*推奨しているわけではありません。自身の判断ではなく専門家の指示を仰いで下さい。

肉食動物であるライオンは植物を消化する器官を持っていない為ヴィーガンになる事は相当難しいと思いますが、果実や植物を消化できる器官を持っていて肉以外の食べ物から栄養を吸収できる人間は、必ずしも肉を必要とする動物ではないのです。

ビタミンB12は植物から摂取するのが難しい厄介な栄養素

先程、肉以外から栄養を吸収できるので肉は不要と書きましたが、1つだけ厄介な栄養素があります。

それが「ビタミン12」です。

ビタミン12は植物から摂取することの出来ない栄養素で、不足すると貧血・末梢神経障害、体力低下、疲労などを起こしてしまいます。

ビタミンB12は牛レバー・シジミ・アサリ・乳製品などに多く含まれているので、普段意識していない人でもこれらの食品から知らず知らずのうちに摂取しています。

肉食をやめるに当たって避けて通れない栄養素です。

昆虫は牛豚鶏の代替になるのか

無印良品:コオロギが地球を救う?

日本では肉食のイメージがあまりないですよね。

日本昔ばなしでも、爺さんと婆さんがステーキをがっついているシーンは記憶にありません。

しかし現代の日本では、お肉が食卓の主役です。

もし肉食を禁止されて明日から昆虫を食べなさいと言われたら、あなたはどうしますか?

肉食禁止令は実際にあった法律

675年。天武天皇は肉食禁止令を発布しました。

それからも江戸時代に入るまで肉食禁止令は度々発布されていました。

6世紀ごろに日本に入ってきた仏教の影響もあり、肉食はなかなか一般化されなかったんです。

現代のように肉食が当たり前になったのは、1950年頃から

肉食文化の時代は意外と短いんですね。

では、肉食が一般化されるまでのタンパク質の摂取源は何だったのか?

それは魚、大豆、そして昆虫です。

記録によると江戸時代に食べられていた昆虫は、イナゴ・ゲンゴロウ・ガムシ・カミキリムシ・エビズルムシが多かったようです。

明治の文明開化以降、大正時代にも昆虫食文化は続いていました。

再び昆虫食文化が始まるか|世界ではスタンダード

2013年5月。国連食糧農業機関(FAO)は、食糧問題の解決策の1つとして昆虫食を推奨する報告書を発表しました。

意外かもしれませんが世界人口の1/4、およそ20億人が既に昆虫を常食としています。

しかも、限られたごく一部の地域などではなく、アフリカ・南北アメリカ・アジア・ヨーロッパなど100カ国で食されているのです。

日本でも無印良品がコオロギせんべいやコオロギチョコを発売して話題になりましたよね。

今、昆虫食が熱いのです。

はい、分かります。いきなり昆虫食と言われても無理ですよね。

味とか栄養とかの前に見た目が無理なんです。

でも海老は食べますよね?

確かによく見たら怖いけど、海老や蟹はそこまで抵抗なく食べられませんか?

結局は慣れなのかもしれません。

参考:食用及薬用昆虫に関する調査

2050年。人類が肉食をやめる日が来る

地球を救うために明日から昆虫食生活とはいきませんが、

  • 例えば1週間のうち1食は肉食をやめてみる
  • コーヒーをブラックで飲む

など小さなアクションは起こせそうです。

今から禁肉に慣れておく事で2050年に訪れる禁肉文化を上手に乗りこなせるかもしれません。

禁酒・禁煙・禁肉

肉食をやめるのは禁酒や禁煙に近いのかなと考えています。

禁酒と禁煙の両方を経験しているのですが、始める前は言い知れない不安感や寂しさを感じました。

何かを始めるのではなく、やめるだけで何もしなくていいのに難しいって面白いですよね。

タバコに関しては2週間ほどずっと頭の中にタバコのことがある状態が続き、次第に忘れていきました。

酒に関しては「今夜だけやめてみよう」を続けた結果、飲みたいと思わなくなっていきました。

現在禁肉はしていませんが、世界ではその価値観が広がっているように感じます。

もちろん突然すぐに訪れる事はありませんが、一度禁肉の文化が始まってしまったら元の世界に戻ることはないでしょう。

わざわざ環境を破壊して動物を虐殺する必要はないからです。

ヴィーガンの親元で育った子供たちが親になるまで30年。当然、その子供たちも肉食の文化を持っていないでしょう。

また、2050年に世界の人口は100億人に達すると言われていますが、2050年の国別人口予測1位はインドで、80%の人が牛肉を食べないヒンドゥー教徒です。

インドはGDPでも台頭してくると予測されていますので、世界に与える影響力は大きいはずですよね。

2050年。世界の食文化はどうなっていたら面白いと思いますか?

その時に流行っている食べ物は、何からできているのでしょうか?

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